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トロンボーンスライド掃除棒の使い方

更新日:2021年6月12日

トロンボーンにとってスライドは音程を変える重要な部分で、マウスピースから1番最初に息や振動が通る場所。心臓のような存在だと、私は思ってます。

奏者の方々も「掃除」と言えば真っ先に行う場所ではないでしょうか?



トロンボーン修理で、「掃除棒を使って掃除していたら、ガーゼがスライドの中に取り残されて取れない」といったご依頼をお受けすることが時々あります。


快適に使うためにやった掃除で逆に吹けなくなってしまうと、ご本人にとっては相当ショックな事だと思います。

かと言って焦って掃除棒で押してみたりといった行動で余計に取れにくくなり、スライドを傷めたり修理費が余計にかさんだりしてしまします。

でもスライドを掃除しないと、汚れをためてしまいスライドの動きもどんどん悪くなってしまいます。


ガーゼ詰りは、トロンボーンあるあるの1つと私は思っておりますが、そんな事故は起きないに越したことはありません。

そこで、今回は私の行っているトロンボーンスライド掃除棒の使い方をご紹介したいと思います!

もう使用方法はご存じの方も多いとは思いますが、良ければご覧ください。




(前置き長くてすみません…)




まずはガーゼを用意します。

長さは掃除棒よりも少し長いくらい。1mくらいあれば理想です。


ガーゼを広げ、先を少し折り曲げます。



その折り目の端の片方を掃除棒の先の細い穴に8~10㎝程通します。

その先を①の通りガーゼの広い面に向かってくるくると巻き、掃除棒を包みます。


巻いた厚みがスライドの外管内と同じくらいの太さになったら②の通りガーゼの先を手前側に折ります。

※この時、折った先のガーゼが掃除棒の先をカバーしていることを確認してください。


ガーゼをピンと張った状態で掃除棒の持ち手のリング部分までたぐり寄せ、リングとガーゼを一緒に握ります。




掃除棒側の準備はこれで完了です!早速掃除をしていきましょう♪


作業中、ガーゼが引っ掛かり引く勢いにスライド本体が釣られて、スライドを振り回してしまう可能性も無いとは言い切れません。

万が一に備え、周りに物が無い事を確認してできるだけ広い場所で作業を行ってください。



準備した掃除棒をスライドに入れます。

※この時手は、掃除する側のパイプを握るようにしてください。持ち手の支柱や反対側(掃除しない側)のパイプを持つと、掃除の際にスライドを曲げてしまう可能性があります。


入れる際にガーゼがスライド内面にしっかり当たっていることを感じながら入れてください。

もし巻いたガーゼが太すぎて入れにくかったり、細くて抵抗感なくスルスルな場合は、ガーゼの巻き加減を調整してください。

ガーゼが掃除したい面にしっかり当たり、かつ作業ができる程度の程よい抵抗感があるのがベストかと思います。

(抵抗感などは個人差があると思いますが、安全に掃除していただく事がメインですので無理の無い範囲での作業をお願いします)



後は何度か抜差しして中の汚れを取ります。

この際スライドを持つ腕は、肘を曲げずしっかりと伸ばしてください。

肘を曲げて作業すると、先に述べたように万が一ガーゼが中で引っ掛かった際に勢いに負けてスライドを振り回してしまう可能性があります。

(私は過去に一度油断して顔面に素晴らしい一発を喰らった事があります)


あいにく、がっつり汚れているスライドをご用意できず、この写真だと非常に分かりにくいと思いますが、ガーゼの先の方が汚れで緑色っぽくなっているのが分かりますでしょうか?

ガーゼの巻き具合を変えたり初めの折る場所を変えたりしてガーゼの当たる面を変えながら何度か掃除棒を抜差ししていただくと、どんどん奇麗になると思います。



これで掃除棒の作業は一通り終了です。

あれ?内管は?と思われた方もおられるとは思いますが、すみません。私は掃除棒を使っての内管内の掃除はお勧めしておりません。


というのも、内管の上側(マウスピースを差す側)のパイプには、マウスパイプというマウスピースを差した際に安定させるための短いパイプが入っております。

※マウスパイプの意図はもっといろいろあると思いますが、今回は「こんなパイプが入ってる」ということを伝えたいだけですので簡易な表現を使わせていただきます。


このパイプは、マウスピースがフィットしやすいように入ってすぐに筒が細くなってます。

まずここでガーゼが引っ掛かりやすいです(特にロータリーの無いテナー管や、テナーバスの中細管)。

無理に入れてしまうと、パイプを変形させてしまう可能性があり、マウスピースが安定しなくなるだけでなく、吹奏感に影響が出る可能性もございます。


またマウスパイプはスライドのパイプに比べ短いパイプですので、もし掃除棒が入ったとしても、引き抜く際、中にあるパイプの先がガーゼに引っ掛かりガーゼが抜けなくなったりパイプを変形させてしまう可能性がございます。


他にも、内管は外管に比べパイプが1点でしか支えられておりません。

(外管は支柱と頭のU字管との2点)

その為、引っ掛かった際のパイプへのダメージ(曲がりや変形など)が大きいように思います。


そんなこんなで外管に比べてリスクが高いので掃除棒を使っての内管のメンテナンスは私からはお勧めいたしません。

内管内の水分を取る際は、専用のスワブなどを通していただければと思います。

その際スワブは通す前に一度広げ、結び目などないことを確認していただき、お通しください。引き返すとマウスパイプに引っ掛かりますので、一方通行でお願いします。


内管の表面は、掃除棒から外したガーゼを使って、汚れや水分をふき取っていただければと思います。




最後に、掃除棒の使い方の悪い例をご紹介します。

まず、掃除棒の先が保護されておらずむき出しですね。

これだと、スライドの先がうまく掃除しにくい状態です。

また、この状態で掃除した際に勢いよく作業しすぎて、スライドの頭を中から突いてしまい、パイプを変形させてしまったり、最悪の場合金属がもろくなっていると突き破って穴をあけてしまう可能性もございます。

そうでなくとも、むき出しの金属で突かれたら、あなただったら痛みを感じると思います。

それと同じように楽器もきっと痛い思いをしてると思いますので、もし突いてしまった時に少しでも痛くないよう、そして事故の可能性を少なくするためにも、掃除棒の先はガーゼでしっかりと保護してください。


もう一つ、ガーゼの長さが足りずに掃除棒の持ち手まで届いてないですね。

この状態だと掃除棒を入れて引き戻す際、カーゼが束になりやすく中で詰まりやすくなります。また、そのまま掃除棒が外れ、ガーゼだけが中に取り残されてしまう可能性もございます。

ガーゼを掃除棒の持ち手までもってきてピンと張った状態で掃除棒と一緒に持つことで、掃除中にガーゼが掃除棒から取れにくくなり、またガーゼがたわんでスライド内に引っ掛かりにくくなります。また、もしガーゼが掃除棒から外れ掃除棒を抜いてしまった時でも、ガーゼがパイプから見えてる状態ですので、ガーゼを引っ張り回収することもできるでしょう。





いかがでしたか?

以前勤めていた会社で教わったやり方に私なりの解釈も交えて紹介いたしました。

もうご存じの情報だったり初耳の情報だったり別の解釈があったりとご意見様々でしょうが、これを期に今まで以上に安全な作業状態の構築と、快適な音楽ライフを持続する手助けになると幸いです。

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